2017年12月29日金曜日

体温が30度の患者さん

 外で倒れていたと言う事で搬入された90歳の男性です。体温は30度でしたが、意識は清明で、体温以外のバイタルサインに異常はありませんでした。

pH 7.279
PCO2 38.4 mmHg
PO2 71.9 mmHg
HCO3 17.6 mmol/L
BE −9.5 mmol/L
Na 142.6 mEq/L
K 4.66 mEq/L
CL 108 mEq/L
AnionGap 21.7 mmol/L
Lactate 6.82 mmol/L

 血液ガスの検査は体温が37度だと仮定して検査をするようです。この人はそれよりも7度も体温が低いので、患者さんの体内でのデータと、出された結果には違いがないのでしょうか?実はあるのです。体温で補正して治療をしなければならないという考えはpH-statと言うようです。補正しなくて良いと言うのがα-statと言うようです。どちらが良いのか議論があるようです。

 しかし、こちらのブログにも書きましたが、体温が低くても、普通に解釈して治療して構いません。本当は体温が下がるとPaCO2は低下するようなので、この人は呼吸性アシドーシスがあるのかも知れませんが、気にしなくて良いです。SpO2が93%程度でしたので念のため酸素投与を行っています。

さて、この血液ガスの解釈をしてみます。
 この患者さんはpHが低く、アシドーシスがあります。
 PCO2が正常ですので、代謝性アシドーシスがあります。
 Anion Gapは正常値の12 mmol/Lから9.7 mmol/L上昇しており、AGが上昇する代謝性アシドーシスがあります。
 補正HCO3(アニオンギャップの上昇値をHCO3に足した物)は27.3 mmol/L程度であり、代謝性アルカローシスはなさそうです。
 AG上昇の代謝性アシドーシスでは、中毒、腎不全、乳酸アシドーシス、ケトアシドーシスなどを考えるのでしたね。この人は、乳酸が正常値の2 mmol/L以下より高値なので、乳酸アシドーシスと考えて良いでしょう。乳酸値の上昇とAGの上昇には明確な関連はないようです。
 乳酸アシドーシスの原因は、きっと低体温による循環不全でしょうね。

 加温と輸液で検査データは改善しました。ちなみに、低体温を温かい輸液で治療しようという試みはしないようにしましょう。

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